交通事故のタイミングで財産は大きく変わる
※この記事のまとめはこちら ⇒ 交通事故の被害者と自己破産のまとめ
ナツメ@破産百科です。
自己破産の手続きの前後に交通事故に遭ってしまった場合、
保険金や賠償金の扱いがどうなるのかを解説します。
自己の被害者が自己破産中に賠償金を手に入れても自分の財産にはなりません。
破産財団に組み入れられます。
しかし、自由財産の拡張を使うと自分の財産に出来ます。
また、差し押さえるのが妥当でない財産もあります。
交通事故が自己破産の前なのか後なのか?
自己破産の後だった場合
まず、交通事故に遭ったタイミングが「破産開始の決定」の「後」だった場合です。
その場合は保険金も損害賠償金も「新得財産」になるので自分のものになります。(破産法34条1項)
自己破産では破産開始の決定の時点で
破産者が所有する財産は破産財団に組み入れられます。
そのため、破産開始の決定の後で手に入れた財産は全て自分の財産になります。
※破産法34条1項
(破産手続開始の原因)第34条 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
自己破産の前だった場合
次に「破産開始の決定」の「前」に交通事故に遭った場合です。
その場合、保険金や賠償金は破産財団に組み入れられるのが基本となります。
破産法34条によると破産者の一切の財産は破産財団に帰属するとなっています。
損害賠償請求権も破産財団に帰属する
このように自己破産では破産開始の決定の時点での財産は
全て破産管財人に管理処分権が移行します。(破産法34条1項)
そのため、破産開始の決定以前の交通事故による損害賠償請求権も
破産財団に組み込まれます。(破産法34条2項)
※破産法34条1項2項
(破産財団の範囲)第34条2項 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
ただし、損害賠償請求権の中には破産財団に組み込むのが
適切でない権利もあります。
自賠責は自由財産となる
自賠責と呼ばれている自動車損害賠償保障法に基づく直接請求権は
差し押さえが禁止されています。(自動車損害賠償保障法18条)
※自動車損害賠償保障法18条
(差押の禁止)第18条 第十六条第一項及び前条第一項の規定による請求権は、差し押えることができない。
差し押さえが禁止されているので自賠責の直接請求権は自由財産となります。
(破産法34条3項2号)
※破産法34条3項2号
(破産財団の範囲)第34条3 第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
2 差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号 に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項 (同法第百九十二条 において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
この直接請求権は交通事故の被害者が
保険会社に対して直接請求できる損害賠償です。(自動車損害賠償保障法16条1項)
※自動車損害賠償保障法16条1項
(保険会社に対する損害賠償額の請求)第十六条 第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
慰謝料請求権は自由財産
慰謝料請求権は破産財団に帰属せず自由財産となります。
損害賠償請求権の中の慰謝料請求権は
これを請求するかどうかは被害者の意思によります。
これを「行使上の一身専属権」と呼び、権利又は義務が特定人に専属し、
他の者に移転しない性質となっています。
そのため、破産開始の決定の前であっても自由財産扱いになります。
物損における賠償請求権は破産財団に帰属する
自動車や車載してあった財産が壊れたり汚れたりした場合の
損害賠償請求権は破産財団に帰属します。(破産法34条1項)
※破産法34条1項
(破産手続開始の原因)第34条 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
自己破産では20万円以上の財産は破産財団で破産管財人が管理することになります。
(東京地裁の換価基準による)
20万円以上の自動車はもともと破産財団行きです。
自動車が壊れたとしても損害賠償請求権は破産財団扱いとなります。
※自己破産したときに所有が認められる財産をまとめました。
⇒ 自由財産の範囲と財産の換価基準
治療費・入院費は自由財産
治療費や入院費は自由財産となります。
治療費や入院費は破産者の再起に不可欠です。
自己破産は債務を整理して人生をやり直す方法です。
怪我を治して健康な体で仕事に取り組むことが経済的更生につながります。
そのため治療費や入院費は自由財産となります。
また、治療費は保険会社から医療機関に直接支払われるのが通例です。
そのため、破産財団が介入する余地はありません。
その他の入院雑費は自由財産の拡張が認められるのが一般的です。
(入院中の日用品購入費など)
休業補償・遺失利益は自由財産の拡張で対処する
休業補償と遺失利益にかかる損害賠償請求権の大半は破産財団に帰属します。
破産財団に組み入れられると財産が債権者に分配されてしまいます。
そこで有能な弁護士は自由財産の拡張を使って破産者の財産を守ります。
交通事故に遭った被害者は本来であれば労働能力があったはずです。
それが交通事故のせいで休業補償が出るほどの損害を被っているわけです。
休業補償というのは将来の給料を補償しています。
つまり休業補償とは給料に相当すると考えられます。
給料は差し押さえの対象にはなりません。
そのため、休業補償は自由財産といえます。
遺失利益も休業補償と同様に自由財産の拡張が使えます。
遺失利益は本来得るはずだった売上を指しています。
そのため、差し押さえ対象にはなりません。
自由財産の拡張で対処可能です。
自由財産の拡張について詳しくまとめました。
⇒ 自由財産の拡張
交通事故の保険会社との交渉
交通事故に遭ったときは保険会社に連絡します。
そのときに交渉を自分でしてもよいのですが、
弁護士に交渉代行を依頼することも出来ます。
弁護士に依頼すると通常よりも慰謝料を増額することが出来ます。
また、治療期間も伸ばすこともできます。
下記の弁護士事務所は着手金が無料です。
弁護士費用も示談後に支払われる賠償金(示談金)の中からの後払いになります。
そのためリスクはありません。
交通事故の被害者が自己破産すると損害賠償はどうなるのか?のまとめ
この記事のまとめです。
交通事故のタイミングで破産者の財産が変わる
- 交通事故が破産開始の決定の後なら損害賠償金は新得財産となり自由財産です。
- 自由財産とは破産財団に帰属しない自分で所有できる財産のこと
- 交通事故が破産開始の決定の前なら損害賠償請求権は破産財団に帰属する。
交通事故にまつわる損害賠償項目
- 自賠責は自由財産です。
- 慰謝料請求権は自由財産です。
- 物損における賠償請求権は破産財団に帰属します。
- 治療費・入院費は自由財産です。
- 休業補償・遺失利益は自由財産の拡張を使って自由財産にする。
- 保険会社との交渉は自分でやるより弁護士のほうがお得
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