自己破産ではパソコンは差し押さえされない

この記事のまとめはこちら ⇒ 自己破産とパソコンの差し押さえのまとめ

 

ナツメ@破産百科です。

 

自己破産では破産者の財産は換価処分されます。
差し押さえされた財産は売却されて債権者に分配されます。

 

しかし、パソコンは「ほぼ」100%の確率で差し押さえされません。
パソコンは生活必需品のため差し押さえ禁止動産だからです。

 

「ほぼ」100%なので中には差し押さえされるパソコンもありますが、
それは例外中の例外となっています。

 

今回は、自己破産の差し押さえルールと
パソコンの取り扱いについて解説します。

 

自己破産の差し押さえルール

自己破産では破産者の財産は差し押さえされます。
(破産法34条1項)

 

※破産法34条1項

(破産財団の範囲)

第34条  破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。

 

しかし、差し押さえ禁止となっている財産があります。
(破産法34条3項2号)

 

※破産法34条3項2号

3  第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。

二  差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号 に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項 (同法第百九十二条 において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。

 

生活必需品や仕事に使う道具などは差し押さえ禁止です。(民事執行法131条)

 

※民事執行法131条

(差押禁止動産)

第百三十一条  次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
一  債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二  債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
三  標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
四  主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
五  主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
六  技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
七  実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
八  仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
九  債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
十  債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
十一  債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
十二  発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
十三  債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
十四  建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

 

これらの財産を差し押さえると破産者が生活出来なくなるので
差し押さえ禁止となっています。

 

※差し押さえは動産執行ともいいます。
強制的に執行されるので強制執行と呼ばれることもあります。
※動産とは不動産以外の換価可能な財産のことです。

 

東京地裁ではパソコンは差押禁止の運用(差押禁止動産)

東京地方裁判所では「差押禁止動産目録」を公開しています。
これによるとパソコンは生活必需品扱いとなっています。

 

そのため、パソコンは差し押さえ禁止です。

 

※差押禁止動産目録

数量に関係なく差押禁止 1点まで差押禁止

調理器具
食器棚
冷暖房器具(エアコン除く)
衣類(靴を含む)
食器類
ベッド、寝具
タンス
椅子

漫画
ゲーム

洗濯機
乾燥機
電子レンジ
ラジオ
テレビ(29インチ以下)
掃除機
パソコン
鏡台
湯沸かし器(電気ケトル含む)

パソコンは1点まで差し押さえされません。

 

余談ですが、29インチを超える大型テレビは差し押さえされます。
また、高級ブランドの服やカバンなどは査定次第で差し押さえ対象となります。

 

生活必需品といっても査定額が20万円を大きく超える場合は
管財人や差し押さえ執行官の職権で差し押さえされます。

 

ざっくばらんに言うと「これがなくても生活に困らない」と判断されると
差し押さえ対象となります。

 

 

ローンを組んでいるパソコンの差し押さえ

ローンを組んで購入したパソコンの場合、
パソコンの所有権は販売会社に留保されています。

 

つまり、ローンを完済するまでは販売会社に所有権があり、
販売会社から使わせてもらっている状態です。

 

所有権が販売会社にあるので、
厳密には破産管財人にパソコン差し押さえる権利はありません。
販売会社が破産者にパソコンの返還を要求できるだけとなります。

 

通常であれば、支払い不能になって受任通知を販売会社に送った時点で、
パソコンの引き揚げを要求されてもおかしくはありません。

 

この引き揚げ請求はローンを組んだ自動車ではよくあることです。
しかし、パソコンの場合は引き揚げを請求されることはまずありません。

 

パソコンに限らず所有権が留保された少額の割賦契約では、
破産者の債権は放棄するのが通例となっています。

 

パソコンのように20万円未満の少額物品の場合、
引き揚げ請求をすると費用倒れになるケースもあります。

 

引き揚げにかかる費用と物品の売却処分や査定の費用を考慮すると
放棄してしまったほうがメリットがあると言えます。

 

そして、引き揚げ請求されないパソコンは、
生活必需品なので1点まで差し押さえ禁止となります。

 

パソコンを一括払いで購入した場合

パソコンを一括払いで購入した場合、
またはローンを完済したパソコンは自己の所有物となります。

 

このパソコンは先程述べたとおり、差押禁止動産になります。

 

パソコンを仕事で使用する営業用の場合は差押禁止ですし、
家庭で使う自己用の場合は1点まで差押禁止です。

 

 

パソコンを2点以上所有している場合の差し押さえ

パソコンを2点以上持っている場合は差し押さえ対象になる可能性があります。

 

先に述べた通り、1点目のパソコンは差押禁止動産です。
2点目からは通常の差押ルールが適応されます。

 

自己破産では財産の換価基準を20万円としています。
そのため、時価20万円以上のパソコンは差押対象です。

 

パソコンの時価の計算方法

時価の計算方法は2つあります。
減価償却と中古市場での実勢価格となります。

 

パソコンの減価償却

減価償却期間は、

  • デスクトップ本体が4年間
  • ノートパソコンが4年間
  • 付属品・周辺機器は5年間(モニター・プリンターなど)

となっています。

 

そのため、4年以上使ってる場合は無価値になるので、
差し押さえされません。

 

また、減価償却期間が4年間なので、
1年ごとに25%づつ価値が減ります。

 

20万円のパソコンを購入して1年間経つと時価15万円となります。
そのため、換価基準の20万円を下回るため差し押さえされません。

 

パソコンの中古市場での実勢価格

中古市場での実勢価格を時価とします。
ヤフオクやアマゾンでメーカーと型番を検索します。
調べた価格が実勢価格となります。

 

中古パソコンには査定は必要ありません。
査定書も提出しなくて構いません。

 

査定が必要なのは自動車と不動産です。

 

この減価償却価値か中古実勢価格のどちらか低いほうで申請します。

 

 

パソコンの差し押さえの注意点

パソコンが差し押さえされるようであれば、
データのバックアップを取ります。

 

USBメモリーや外付けHDDにデータを移行して保管します。

 

また、差し押さえされるパソコンのデータを消去します。
パソコンには重要情報が記録されています。

  • IDやパスワード
  • クレジットカード番号や銀行口座情報など
  • 住所や名前などの個人情報

このような重要情報をそのままにして差し押さえされるのは大変危険です。

 

必ず消去しておくことを強くオススメします。

 

 

自己破産とパソコンの差し押さえのまとめ

このようにパソコンは差し押さえ禁止動産です。
したがって、差し押さえの心配はいりません。

 

ただし、差し押さえ禁止なのは1台目だけとなっています。
パソコンを2台以上持っている場合は注意が必要です。

 

また、20万円を超える高額パソコンは換価対象になってしまいます。
映像編集者が使うようなプロ用であれば30〜50万円程度と高額ですが、
普通に売っているものは3万円〜15万円程度となっています。

 

そのため、自己破産の換価基準に達しません。

 

たとえ高額パソコンであっても、減価償却や中古市場での時価を考えると
パソコンが差し押さえされる危険性は低いといえます。

 

こちらの弁護士事務所では差し押さえにも対応可能なのでオススメします。
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