特定調停は給料の差し押さえを防げる、しかし過払い金には未対応

ナツメ@破産百科です。

 

特定調停の最大のメリットは給料の差し押さえを防げることです。
民事執行手続きの停止を使って差し押さえを防ぎます。

 

しかし、デメリットとして特定調停委員に弁護士はいません。
過払い金にも対応していません。

 

そこで、特定調停の利用法としては、
債務整理全体を弁護士に管理してもらってから
強硬な姿勢を見せる債権者とだけ特定調停します。

 

こうすることで特定調停のメリットだけを享受できます。

 

特定調停とは

特定調停の仕組み

任意整理の一部の債権者を相手に裁判所に調停を申し立てることが出来ます。
特定調停では特定の債務の調整を行います。

 

特定調停では簡易裁判所の調停制度を利用します。
裁判所の特定調停委員が債権者と債務者の間に入って調停してくれます。

 

特定調停の特徴

大きな特徴として2つあります。

  1. 差し押さえなどの民事執行手続きを停止できる。(特定調停法7条)
  2. 金融業者に取引履歴の開示を請求出来る。違反には制裁として10万円以下の過料があるので圧力をかけられる。(特定調停法12条、24条1項)

裁判所を利用した手続きなので法的な拘束力があります。
そのため、和解に応じない債権者に対して有効に利用できます。
その一方で、裁判所では厳格な手続きを行うので時間と労力がかかります。

 

 

特定調停のメリット

特定調停の最大のメリットは給料の差し押さえを防げることです。
差し押さえを防ぐには民事執行の停止を使います。

 

民事執行手続きの停止

特定調停の申立をすると差し押さえなどの民事執行手続きを停止できます。
(特定調停法7条1項)

 

※特定調停法7条1項

(民事執行手続の停止)

第7条 特定調停に係る事件の係属する裁判所は、事件を特定調停によって解決することが相当であると認める場合において、特定調停の成立を不能にし若しくは著しく困難にするおそれがあるとき、又は特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるときは、申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで、特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止を命ずることができる。ただし、給料、賃金、賞与、退職手当及び退職年金並びにこれらの性質を有する給与に係る債権に基づく民事執行の手続については、この限りでない。

 

ただし、執行停止には条件があります。

  • 特定調停によって解決することが妥当である案件
  • 執行手続が特定調停の成立を不可能もしくは困難にする恐れがあること
  • 執行手続が特定調停の円滑な進行を妨げる恐れがあること

この条件のいづれかを満たす場合、
特定調停の終了まで民事執行手続きを停止できます。

 

ただし、税金や社会保険料の滞納による差し押さえは対象外です。
また、仮差押えも停止にはなりません。
仮差押えとは係争中の債務者の財産の処分権に裁判所が制約を加えることです。
仮差押えになっている場合は債務整理が決着するまで
自由に財産を売買や譲渡することは出来ません。

 

給料の差し押さえを防ぐ

サラリーマンや派遣社員のような給与生活者にとって給料の差し押さえは深刻です。
ただ単に給料が減って生活費に苦労するだけではありません。

 

給料の差し押さえの事実が会社側に伝わってしまうので、
借金問題で裁判沙汰になっていることがバレてしまいます。

 

会社側との雇用関係や社内の人間関係にも影響します。

 

差し押さえが原因で働きづらくなり、
借金の返済に余計に苦労することになります。

 

そのため、先程の

  • 執行手続が特定調停の成立を不可能もしくは困難にする恐れがあること

という執行停止理由に該当します。

 

これによって、特定調停の申立をすると給料の差し押さえを防ぐことが出来ます。

 

上記条文の
「ただし、給料、賃金、賞与、退職手当及び退職年金並びにこれらの性質を有する給与に係る債権に基づく民事執行の手続については、この限りでない。」
という文言は労働者の生活を守るための規定です。

 

サラリーマンなどの給与生活者が債権者の場合は
会社側に給料などを請求できます。
会社側が債務者の場合、民事執行手続きの停止を申し立てることは出来ません。

 

取引履歴の開示請求に法的拘束力がある

金融業者に取引履歴の開示を請求できます。(特定調停法12条)
開示に応じない業者には10万円以下の過料が発生します。(特定調停法24条1項)

 

※特定調停法12条

(文書等の提出)

第12条 調停委員会は、特定調停のために特に必要があると認めるときは、当事者又は参加人に対し、事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができる。

 

※特定調停法24条

(文書等の不提出に対する制裁)

第24条 当事者又は参加人が正当な理由なく第十二条(第十九条において準用する場合を含む。)の規定による文書又は物件の提出の要求に応じないときは、裁判所は、十万円以下の過料に処する。

 

特定調停では、過料を背景に強硬な姿勢を見せる業者に圧力をかけられます。
任意整理で取引履歴の開示に応じない金融業者への対抗策として、
この文書提出義務のある特定調停は大きな武器になります。

 

 

特定調停のデメリット

債務整理の手続きで特定調停があまり活用されません。
特定調停は債務整理の実務にとって致命的なデメリットがあるからです。

 

特定調停委員に弁護士が含まれない

裁判所の特定調停委員は有識者からの推薦を受けて、
法律・税務・金融・財務・資産評価などの専門家が選任されます。

 

ただし、調停委員には弁護士が含まれていません。
債務整理の専門家である弁護士が調停委員にはならないので、
調停の実態は芳しくありません。

 

例えば、利息制限法に違反した金利を見逃した例があったり、
将来利息の免除がされない調停もあります。
弁護士が行う任意整理では和解後の将来利息は0円になるのが通例です。

 

また、本来であれば自己破産や個人再生のほうが適切であっても、
調停委員の無知により方針選択が特定調停に限定されてしまうこともあります。

 

相続放棄や消滅時効の援用といった
債務整理以外の解決策が選べないことも珍しくありません。

 

差し押さえを防ぐには担保が必要

民事執行手続きの停止には担保が必要とも不要ともされています。
(特定調停法7条2項)

 

※特定調停法7条2項

2  前項の裁判所は、同項の規定により民事執行の手続の停止を命じた場合において、必要があると認めるときは、申立てにより、担保を立てさせて、又は立てさせないで、その続行を命ずることができる。

 

東京簡易裁判所では担保が必要とする運用になっています。
債権額の5%〜20%の担保を差し出すことになっています。

 

100万円の調停では5万円から20万円の担保になります。
この担保は法務局に現金で供託します。

 

現金で最大20%の担保を用意しなくてはいけないので、
債務者にとっては大きな負担になります。

 

過払い金に未対応

特定調停は借金の返済に苦しんだ債務者が
債務の減額を求めて相手方と調整するための制度です。

 

そのため、貸金業者に過払い金を支払わせることを想定していません。
過払い金請求では借金に苦しでいる人が債権者になり金融業者が債務者になります。
つまり、特定調停が想定している債権者と債務者の関係が入れ替わります。

 

制度的な問題があるので特定調停だけでは
過払い金の存在が判明したときに対処できません。
別途、過払い金返還訴訟を提起して返還を求めていくことになります。

 

 

特定調停の有効な利用

このように特定調停では弁護士がいないために、
適切な方針が選択出来なかったり、利息を余計に支払うなどデメリットがあります。
過払い金請求にも対応していないので、別途訴訟を提起する必要もあります。

 

しかし、給料の差し押さえを防いだり、
取引履歴の開示に法的拘束力を持たせることが出来ます。

 

特定調停の使い方として以下の方法があります。
まず、任意整理を弁護士に受任してもらいます。
次に強硬な姿勢を見せる債権者限定で特定調停の申立をします。

 

こうすることで特定調停のメリットだけを享受できます。
また、債務整理全体は弁護士が管理するのでデメリットを防ぐことも出来ます。

 

 

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