生活保護と債務整理の関係、法テラスの支払いは免除される

ナツメ@破産百科です。

 

以前、自己破産の体験談で生活保護の申請を考えたました。
⇒ 法テラスの支払いを滞納した、生活保護も考えたが、、、

 

生活保護を受給すると法テラスの支払いが免除されます。
債務整理の費用負担が実質的に0円になります。

 

今回は生活保護受給者が債務整理するときの注意点、
生活保護を受けられる条件と資産と仕事について解説しています。

 

債務整理と生活保護の関係

債務整理と生活保護の関係には2つのパターンがあります。

  1. 生活保護受給者が債務整理を行い過払い金が発生した。その過払い金の法的処理
  2. 債務整理で借金問題は解決したが、生活再建のために生活保護を利用する場合

 

生活保護受給者の債務整理は自己破産になるのが原則です。
生活保護費を借金返済に使ってはいけないルールがあるため、
支払い不能になっているからです。
支払い不能は法律上の破産原因なので自己破産処理になります。

 

しかし、生活保護から早期に脱却が見込まれる場合、
または借金額が少ない場合など自己破産以外の処理になることもあります。

 

または、長期間に渡って消費者金融に返済をしてきた場合は、
過払い金が発生することがあります。
その場合は過払い金を原資として任意整理となる可能性があります。

 

 

過払い金と保護費の返還の関係性

「過払い金が発生した場合は今まで支給された保護費を返還しなくてはいけないのか?」
という問題があります。

 

生活保護ではあらゆる自己資産を活用することが義務付けられています。
※生活保護法4条1項

(保護の補足性)

第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

 

また、資力があるにも関わらず生活保護を利用した場合は、
支給された保護費の範囲内で保護費を返還する義務を負います。
※生活保護法63条

(費用返還義務)

第63条 被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

 

そのため、債務整理によって過払い金を回収した場合は、
この保護費返還義務との関係性が問題となります。

 

 

生活保護費の返還と誤解

保護費は税金ではない

生活保護費とは市役所などの地方自治体が生活保護受給者に支給するものです。
このため保護費を返還するときも税金のように役所に徴収されるという誤解があります。

 

一般的な税金の徴収は国税徴収法に定められていますが、
生活保護費の返還義務はこの法律によって定められていません。

 

そのため、生活保護費も他の破産債権と同じように、
破産手続きによって処理されます。
つまり役所だからといって特別扱いされず、消費者金融の借金と同じ扱いです。

 

※破産法100条1項

(破産債権の行使)

第100条  破産債権は、この法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、行使することができない。

 

保護費返還・徴収債権は免責債権

保護費返還・徴収債権は破産法では免責される債権となっています。
税金のように非免責債権ではないので、
免責許可が下りた場合は支払わないことになります。

 

※破産法253条1項但し書き

(免責許可の決定の効力等)

第253条  免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。

 

また、東京地方裁判所の判決でも、
「市役所が生活保護法63条を根拠として、破産手続き中にある受給者から生活保護費を回収したのは、他の債権者の利益を不当に侵害している」
と認定し、保護費返還・徴収債権が免責債権になるという判決を下しています。
(東京地平判22・10・27)

 

 

任意整理の過払い金と生活保護

生活保護費を支給する福祉事務所は、
任意整理で過払い金が発生した場合は、
他の債権者に優先して、これまでの保護費の返還を要求するケースがあります。

 

弁護士との通常の任意整理の契約では、過払い金が発生した場合の取り決めとして、
まず初めに過払い金を残債務に充当して相殺します。
残った過払い金の中から一定の割合が弁護士報酬となります。
その残金が債務者に支払われる最終的な過払い金です。

 

この契約では「福祉事務所や市役所を他の債権者よりも優先する」
という取り決めはありません。
また優先するだけの法的根拠もありません。

 

そのため、福祉事務所も他の債権者と同じ扱いということになります。
役所だからといって特別扱いはされないということです。

 

平成21年3月に厚生労働省が別冊問答集という冊子で見解を述べています。
任意整理の取り扱いの見解として、
過払い金は保護費の返還に当てられるべきではなく、収入認定として取り扱う。
としています。

 

過払い金を収入とするので、過払い金の分だけ生活保護費が減額または廃止となる可能性があります。
生活保護が打ち切りになった場合は、過払い金を使い終わってから再度生活保護を申し込む必要があります。

 

なお、弁護士費用は収入(過払い金)を得るための必要経費になります。
弁護士費用を経費として控除した残額が収入認定対象となります。

 

 

生活保護申請と保護の要件

債務整理によって借金問題を解決したが、
仕事が見つからず生活再建の目処が立たない場合
生活保護を申請します。

 

保護開始の要件

生活保護は生活に困窮していて1ヶ月分の生活費がなければ利用できます。
条件は下記の4要件を満たすことです。

 

日本人、または一定の範囲の外国人

日本人だけでなく認定難民や特別永住者、在留資格のある者となっています。
(人道上の観点から上記に含まなくても保護される可能性はあります。)

 

申請権者から直接保護申請されること

申請できる人は本人の他は同居家族、扶養義務者となっています。

 

福祉事務所は申請の意思確認をし、申請権の侵害はしてはならない規定されています。
申請場所は居住地を管轄とする福祉事務所です。
職員が自宅訪問して調査するので住民票のある場所は関係がありません。

 

住所のないホームレス状態の場合は現時点での居所を管轄する福祉事務所となります。
社会通念上、放置できない急迫状態であれば職権で保護します。
(生活保護法7条但し書き、25条)

 

保護を要する状態であること

保護の法律的な基準として、世帯の収入資産が生活保護法で定める1ヶ月分の生活費を下回っていることです。
あくまで世帯であって個人ではないことが注意点です。
どこまでを同一世帯と認定するかという問題も発生します。

 

利用しうる能力と資産を活用していること
能力の活用とは

よくあるパターンとして働ける能力の「活用」が要件となるにも関わらず、
働ける能力が「有る」から保護を受けられない、と説明されることがあります。

 

働ける能力があっても仕事が見つからないときは生活保護を受けられます。

 

資産の活用と範囲

資産についても一定の範囲で認められます。
居住用の自宅不動産は保有が認められています。
ただし、下記の場合はは保有を認められずに売却を指導されます。

  • 不動産を売ったときに大きな利益が出るとき
  • 住宅ローンの返済をしているとき
  • 65歳以上でリバース・モーゲージを使えるとき

※リバース・モーゲージ
「自宅を担保不動産として金融機関から融資を受け、死亡時に自宅を売却して一括返済すること」

 

自動車は保有を認められませんが、
交通の不便な場所では所有が認められるケースがあります。
また6ヶ月以内に就職できる見込みのあるときは処分を保留されることもあります。

 

このように「利用しうる能力と資産を活用」については、
誤解されている部分も多くなっています。

 

 

弁護士が出来ること

自分一人で申請することが難しければ
自分だけで対処せずに弁護士に相談することをオススメします。

 

弁護士が介入するだけでスムーズに進むことは多いです。

 

ただし弁護士の介入があるとはいえ、生活保護の申請は本人主義です。
代理人だけで申請することはできません。

 

そのため、自分が申請するときに弁護士に同伴してもらう形になります。
同伴しなくても弁護士に電話や郵便で福祉事務所に連絡してもらうのも有効です。
弁護士名の入った意見書を出してもらうことも効果的です。

 

また弁護士は申請が却下された場合は審査請求で争ったり、
却下処分の取消訴訟を行います。(生活保護法24条、69条)

 

 

法テラスと生活保護の関係

法テラスの法律代理援助では、生活保護受給者の償還義務が免除されています。
つまり、生活保護を受けている場合は弁護士費用が無料になります。

 

また、管財事件の引継ぎ予納金20万円については
法テラスから直接管財人に振り込まれる処理となります。

 

つまり、生活保護受給者の債務整理は費用負担が完全にありません。

 

 

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